ふたたび旅(アフリカ編 たびタビ旅part2)

約2年4ヶ月の旅(http://zensin.jugem.jp/)からはや5年あまり。もう行かないはずだったのに、3回目の長い旅へ…。我が旅人生堂々の3部作完結アフリカ編!!…のはずです。

2007年03月



メリダから、新たなる国、コロンビアを目指します。
夜行バスに乗りマラカイボという町まで行き、そこで乗り合いタクシーに乗り換え国境を越えます。
前もって調べたところ、マラカイボ行きのバスは5、6社が運行しておりどれも夜9、10時頃の出発ということであった。
それだけ本数があれば大丈夫だろうということで、マックスと二人、チケットの予約をせずにそのままバスターミナルに向かったのでした。
チケット売り場に行き、マラカイボ行きのバスを探します。
すると、なんと全てのバスが満員ですでにチケット無し!
何故だ、金曜日だからか!?
これでは明日の晩まで待たなければならない。
ショックを受けてまたメリダの街に戻るしかないと思ったが、マックスがもしかしたら急遽キャンセルができ空きができるかもしれないので一応バスの出発場まで行ってみようと提案してきた。
僕は、無理だろうなと思ったが、駄目もとで行ってみることに。
そして、僕が荷物の見張りをしている間、日常会話ぐらいならスペイン語のできるマックスが停車している何台かのバスに直接訊きに行った。
1時間ほど待っただろうか、何台ものバスに断られ駄目だなと諦めかけた頃、マックスが戻ってきた。
そして、「出発だ。」と。
よっしゃ~。
マックス、19才なのに頼りになるやつだ。
かっこいい~。
人間、年齢じゃないね、年齢じゃ。

マラカイボには朝7時ごろに着き、すぐに乗り合いタクシーに乗り換える。
乗客は、僕とマックスに、ベネズエラ人のおっちゃん二人。
いざコロンビアに向けて、出発!
しかし、ここからが最大の難関。
と言うのも、道中にいくつもの警察によるチェックポイントがあるのです。
麻薬だのなんだのを調べてもらうにはいっこうに構わないのだが、問題はベネズエラの警察は腐りきっているどうしようもないやつらだということだ。
お金目当てにいろいろと難癖をつけてきて、旅行者からお金を巻き上げるのだ。
世界各国のバックパッカーが被害にあっているのだが、彼らは特に東洋人を嫌っていて、中国人、日本人に目をつけているらしい。
果たして僕は無事に通過できるのか。
まず一つ目のチェックポイントに近づきます。
タクシーの運転手からパスポートをすぐ見せることができるように準備するように指示されます。
少しドキドキしますが、そこは車を止められることもなく、通過。
セーフ。
ほっとするのも束の間、すぐに二つ目のチェックポイントが近づきます。
そして、そこで車は止められました。
警察官が車の中を覗き込み、乗客全員の顔を見渡します。
それから全員の身分証明書をチェックします。
ベネズエラ人のものは手に取ることもせずチラッと見るだけなのに、僕とマックスのパスポートは手に取りページをめくりじっくりと見ます。
緊張の瞬間。
しかし、その警察官はすぐにパスポートを返してくれ、無事通過。
ここもまたセーフ。
よしよし、なんとかうまく行きそうだ。
僕は、長い間、旅をしてきたのだが、国境でトラブッたことはない運の持ち主なのだ。
三つ目のチェックポイントがやってきます。
そして、ここでも車を止められます。
警察官はここでもじっくりとパスポートを見て、今度は僕とマックスに車を降りろと言ってきた。
なんてことだ~。
車から少し離れたところまで連れていかれ、スタンプがどうだのこうだのと言い始める。
マックスが、ガイドブックを片手にこの先の国境でもらうから大丈夫なのだと説明するがなかなか行かせてくれない。
これまでかと思った時、タクシーから降りて心配そうに近づいてきた運転手が、なんとか勘弁してくれませんかねぇみたいな感じで警察官に話しかけてくれた。
すると警察官はしかたねぇなぁみたいな感じでパスポートを返してくれる。
さっさと車に戻り、すぐに出発。
なんとか、セーフ!!
おお、やったぞ、ついている、行けるぞ~。
すぐに4つ目がやってくるが、ここは軽くパスポートを見られただけで、無事通過。
またまたセーフ!!
よし、きてるぞきてる、このまま一気に国境越えだ~。
そして、五つ目のチェックポイント。
おいおい、いったいいくつあるんだ。
しかし、今日の俺たちはついているんだ、怖いもんはねぇ~。
と思ったら、今度はあっさり車から降ろされました。
しかも、トランクに積んであるバックパックも持ってこいときた。
さらに建物の中に連れ込まれます。
これは、アウトだ~!!!
すぐにボディーチェック。
何ヶ所かに分けておいたお金を全て見つけられ、机の上に並べさせられます。
その中の500ドルほどのドルキャッシュを見ると、目の前の口ひげを生やした丸顔の警察官は、無言でこれは駄目だみたいな感じで頭を振ります。
どうやら、これだけのドルキャッシュを持ち出すことはできないと言いたいらしい。
そんな法律は断じてない!
しかし、警察官はまったく僕らを解放させてくれる気配はない。
ただこれは問題だみたいな顔をして、座っているだけ。
時間だけが過ぎていく。
見かねたタクシーの運転手が、お金を払うしか通る方法はないから払ってはどうだと言ってきた。
マックスと相談して、タクシーの他の客も待っていることだし、それしか方法はないだろうということで、払うことに。
そして、タクシーの運転手に相談し、余っていたベネズエラのお金150000B(約5000円)を渡すことに。
すると、あっさり警察官らは僕らを解放してくれた。
バックパックを担ぎさっさと車に戻る。
後ろを振り向くと、先ほどまでは二コリともしなかった警察官らがにやにやと笑っている。
こいつら~、と思うものの何もすることはできず、ただ敗北感、無力感を感じ窓の外を流れる風景を呆然と眺めるのみ。
一緒に乗っていたベネズエラ人は、僕らに同情してくれるどころか、お前らのせいで遅くなったという嫌悪感を隠そうともしない。
さらに僕らがベネズエラの通貨で払わなければならない出国税が足りないと知るや、かなり悪いレートで米ドルとの両替を持ちかけてきやがる。
お前ら、ベネズエラ人なんて、大嫌いじゃ~!!!

その後、もう一つチェックポイントを通り過ぎ、出国税もなんとか支払い、国境に到着。
そして、イミグレで出国手続きを行い、なんとかベネズエラ出国。
二度と来るか、こんな国!!
でも、エンジェルフォールは見たいな…。
国境から今日の目的地サンタマルタまでのバスが出ていることが分かり、タクシーを降り乗り換えることに。
バスの客引きのおっちゃんに連れられバスに乗り込みます。
後は、コロンビアの入国手続きをするだけ。
バスはなかなか出発せず、1時間半ぐらい経ってようやく動きだす。
すぐにコロンビアのイミグレかと思ったら、バスは止まる気配を見せずどんどん進みます。
ちょっと、待て待て待て~。
車掌に慌ててスタンプを押す手振りをして、コロンビアのイミグレはどこかと訊きます。
車掌は、大丈夫だ大丈夫だみたいなことを言いますが、なんとかバスを止めさせます。
やっと出発したと思ったら、僕らがバスを止めたので、車内は大ブーイング。
うるせい、うるせい、うるせい、こっちはスタンプが必要なんじゃい。
車掌もやっと理解したのか、コロンビアのイミグレまで500mほど歩いて連れて行ってくれます。
しかし、イミグレには手続きを待つ人の長蛇の列。
とても5分、10分でスタンプがもらえるとは思えません。
仕方がないので、僕が列に並んでいる間に、マックスにバスまで置いてあった荷物を取りに行ってもらい、バスには先に行ってもらいました。
いったいバスの中で待っていた時間は何だったんだ~。
そして、イミグレの手続きの速度はかなり遅い。
しかも、室内は空調がなく、暑い。
汗もだらだらと流れてくる。
ちゃっちゃと処理していいかんか~い!!
でも、僕のパスポートにスタンプを押してくれたのは、グラマラスな美人のお姉ちゃん。
ニコッと笑顔で迎えてくれました。
許しましょう。

それから、再びサンタマルタ行きのバスを探し、なんとか乗り込みます。
そのサンタマルタまでの4時間の道中にも、トラブルが二つほど起こったのですが、ここではもう書きますまい。
ここまで、読んでくれた方、かなりの長文に疲れたかと思いますが、なんとかサンタマルタにたどり着いた時には、とにかく僕はもうへとへとに疲れ果てていたのでした。
宿にチェックインして、すぐにビーチに出かけます。
時間は、もう夕方の6時近く。
太陽が水平線に沈んでいき、空には美しい真っ赤な夕焼けが。
この夕焼けを僕はけっして忘れることはないでしょう。
砂浜に寝転んでいるマックスは言いました。
「とにかく俺たちはコロンビアに来たのだ。」
その通り。




朝起きると、ここ数日間久しく見ていなかった青い空、輝く太陽が出ているじゃないですか。
今晩のバスでコロンビアに向けて出発することになっているのですが、それまでは何もすることがない。
これは、もう一度ケーブルカーに乗り、昨日一昨日と見ることができなかった山頂からの景色を見て来いということではないか。
正義は勝つのです。

ケーブルカー乗り場に向かいます。
料金は往復で55000B(約1900円)。
しかし、僕は一昨日、往復チケットを買っており、ロスネバドスの村からジープで帰ったため、下りの分のチケットは使っていない。
だから、その分安くなって34000Bで行けるはずであったのだが…。
チケット売り場で一昨日のチケットを見せてその旨を伝えると、そこの係員のねえちゃんは、そのチケットは無効で今日上りたかったら55000Bを払い新しく券を買いなおせと言う。
それはないだろうと、むこうも少し英語が話せたので、僕は拙い英語を駆使し、このチケットは使えるはずだと抗議するが、どうしても駄目らしい。
僕には珍しく粘り強く15分ほど主張したが、駄目なものは駄目で、結局買うのか買わないのかどうするのかと問われ、しぶしぶ55000Bを払いチケットを買うことになった。
正義もたまには負けるのです。

納得できない気持ちを少し引きずりながらケーブルカーに乗り込みます。
その中からの風景は、昨日はまったく見えなかったメリダの街を見渡すことができます。
いや~いいねぇ。
やっぱり高いお金を払ってまで来た甲斐があったもんです。
一つ目の駅に到着して、ケーブルカーを乗り換えます。
あれ?
何やら雲が多くなってきたぞ。
それから、高度を上げるにつれ、どんどんどんどん雲が多くなり、頂上に着いた頃には一昨日と全く変わらない真っ白な世界。
体が慣れているのか、その時よりは息苦しさを感じません。
…が、そんなことはどうでもいいんです。
僕は雄大な山々の景色が見たいんだ~!!

そう、正義は負け続けるのです。






ここメリダの観光名所はケーブルカー!!
その標高、長さはともに世界一。
4つのケーブルカーを乗り継いで上って行くのですが、最終の駅の標高は実に4765m、その全長は12,5km!!
出発地点が、標高1577mと言いますから、一気に3000m以上も高度を上げることになります。
それにしても、標高4765mと言うと富士山を軽く超える高さ。
よくそんな所までケーブルカーを設置しようとしたもんです。
いったい何を考えているんだベネズエラ人!?

これだけの高所、どれだけ素晴らしい景色を眺めることができるのかと、期待は高まるもんです。
しかし、その道中、山頂からの景色・・・何も見えません。
山は雲に覆われ、辺り一面真っ白な世界。
山頂の展望台に立つものの、その高さを実感できることと言えば、気温の低さと空気の薄さのみ。
いったいどうなっているのだ。
しかし、いつもほどのショックは無い。
と言うのは、僕にはもう一度チャンスがあるのだ。

山頂より一つしたの駅から歩いて4時間ほどの標高2800mほどの場所にロスネバドスという小さな村があり、そこに一晩泊まることになっている。
その村からジープでメリダの町まで戻ることも可能なのだが、僕は再びケーブルカーの駅まで登ることにしていたのだ。
同じ道を再び通ることに少し抵抗を感じない訳でもない。
しかも、1200mほどの標高差を登らなければならない。
いや、でも、すばらしい景色を見るためにはそれくらいの苦労なんともない。
明日に備えて夜9時には就寝します。

次の日、朝7時に起床。
外は、・・・雨。
誰だ、今が乾季なんて言った奴は?



メリダに来たものの、ここの観光名所であるケーブルカーも定休日で動いておらず、また時折しとしとと雨が降るあいにくの天気のためトレッキングなどすることもままならない。
いったい何をして過ごせば良いものかと 悩んでいると、部屋をシェアしているドイツ人のマックスがこの近くに温泉があると言うので、この街で再会したオーストラリア人カップル、マイクルとアニータと4人で行ってみることに。

メリダ近郊の小さな村にタクシーに乗り向かいます。
30分ほどで着き、そこから小さな乗合バスに乗りさらに山に入ること10分程。
小さな温泉にたどり着きました。
海外で温泉と言うと何回か行ったことがあるのですが、汚かったり、すごくぬるかったり、また個室の狭い浴槽であったりと、なかなか満足することはありません。
ここも、ガイドブックにも載っていないような所であったので、全く期待してはいなかったのですが、これがいや中々のもの。
意外に清潔感のある露天風呂で、湯温は若干微温めなもののまずまずの温かさ。
その脇には、小さいながらもスティームサウナまであります。
久しぶりに温かいお湯の中に体をゆったりと横たわらせます。
ふー、気持が良い。
しかし、日本の温泉はこんなもんじゃないな。
日本が恋しくなるひとときです。

でも、その夜のビールはやっぱり最高でした。



シウダボリバールは、世界一の落差を誇る滝エンジェルフォールの観光の拠点となる町。
このエンジェルフォール、南米を旅しはじめた時からすごく楽しみにしていたのですが、最近になっていろいろと情報を集めたところに拠ると、只今乾季の真っ只中で、水がほとんど無いとのこと。
せっかくここまで来たのだからと、僅かな望みを持ってこの町に来た訳ですが、旅行代理店に尋いたりして調べた結果、やはり水は無いとの事。
断念いたしました。
長い旅、全てがうまくいくとは限りません。
乾季のおかげで、ロライマ山は雨に降られることもなく気持ちよく歩けたのだから。

その夜行バスなんですが、ベネズエラのバスはとにかく寒い。
今まで旅してきた南米諸国も寒かったが、それに輪をかけて寒い。
僕の夜行バスに乗る時の服装は、短パンにTシャツ姿に厚手の靴下を履き、長袖のシャツを羽織るというもの。
この格好であれば、今まではそれ程寒さを感じることもなく一晩中ぐっすりと眠ることができたのでした。
しかし、サンタエレーナ、シウダボリバール間を移動する時、初めてベネズエラの夜行バスに乗ったのですが、その時の寒さといったら。
第一、乗っている乗客の格好がすでに違います。
毛糸の帽子をかぶっていたり、厚手のジャンパーを着ていたり、薄い毛布を持ちこんでいたりしています。
ここは、ほんとうに赤道近くの国か!?
僕は、一晩中寒さに震えながら過ごしました。
おかげで、少し喉が痛くなり、危うくまた熱でも出しそうになりました。

今回は、その経験を生かし、長ズボンをはき、フリースを着こみました。
おかげで、何とか寒さに震えることもなく、ぐっすりと眠ることができたのでした。
それにしても、こんなに寒くするなんてベネズエラ人、何を考えているのだ?



ロライマ山から戻りサンタエレーナの町でしばらくのんびりとした後、夜行バスでシウダボリバールに向かう。
サンタエレーナでは、アマゾン川の船で一緒だったスコットとも再会し、トレッキングのメンバーや他の宿泊者たちと、飯を食い、酒を飲み、毎晩夜遅くまで話したのでした。
僕が英語をあまり話せないことも気にならないほど、みんなも気をつかってくれ、ほんとうに楽しくリラックスした時間を過ごしたのでした。
こうなると別れが辛いってもんです。
バスに乗ると、淋しさが込みあげてきます。
あぁ、僕って孤独。

シウダボリバールの町に着き、宿にチェックインします。
そこには、マナウスやサンタエレーナで会った、知った顔がチラホラと。
「おぁ、久しぶり」なんて挨拶します。
はい、旅人の世界なんて狭いもんです。

ここで再会した中の一人、マナウスで会ったフランス人のおっちゃん。
このおっちゃん、欧米人の旅行者に珍しく英語が殆ど話せない。
僕よりも話せないくらいだ。
しかし、こういったケースは稀で、欧米人の旅行者は母国語が英語でない人達も、ほぼ全員、日常会話には不自由しないくらいの英語力を持ち合せている。
これは少し不思議な気もする。
と言うのも、例えばヨーロッパの国々を旅すると、英語が話せない人は大勢いる。
にもかかわらず、旅行者はほぼ100%話せる。
これは一体どういう事なのか。
英語を話せる人しかバックパッカーにならないのか。
そうなると、僕をはじめほとんど英語を話せず世界各地を旅続ける日本人たち。
これは、すごいことなのか。
やっぱり変わっているのか日本人?



急遽山を下りることとなった。
本来の予定は今日一日山の上をトレッキングし、もう一泊ここに泊まり下山することになっていた。
それを、午後2時に麓のキャンプ場に向けて出発することになった。

その原因は、虫歯。
あの歯が痛くなる虫歯です。
バリーは、トレッキングを始める前から虫歯が痛いと言っていたのだが、高度の高い所に来た影響もあるのか、痛みが増し、昨晩はほとんど一睡もできなかったらしい。
歯医者を目指し勉強中の学生であるアニータの診たところによると、やはりかなり酷いらしくできるだけ早く医者に行った方が良いとのこと。
よって、午前中のトレッキングが終わり、キャンプ地に戻り昼食を取った後、みんなで午後の予定をキャンセルして山を下りよう、そうすれば一日早く医者に見せることができるからと、バリーに提案した。
僕は、もうちょっとここに居たいという気持ちも無かった訳けでもないが、バリーの苦しみを考えればそうも言ってられない。
しかし、バリーは僕らに遠慮してか、下りるとは言わず、大丈夫だと言う。
それでも、もうここの風景も十分見たから下りようと何回も説得するのだが、やはりバリーは大丈夫だと言い張る。
さすがにみんなも諦め予定通り今晩もここに泊まるということになった。
しかし、午後のトレッキングに行こうとなった時、マイクルとアニータはもうトレッキングは十分だから、テントに残ると言う。
これは、バリーを山から下ろすための作戦か?
バリーもウェンディーも行かないと言うので、ほとんど皆行かないということになる。
そうなるとみんなでここに滞在することの意味もなくなる。
そこでもう一度、バリーに山を下りようと提案しました。
すると、さすがに同意して、みんなで下りることとなったのです。

しかし、人間というものはつくづくいろんな事を考える生き物だなと思う。
「バリー下りよう」「うん、分かった」で終わる話が、こんな回りくどい事になってしまうのだ。
ホント非効率な話だと思う。
まぁ、それが相手のことを思いやる人間らしさというものかもしれないが。
僕なんてついつい本人が大丈夫って言ってるんだから放ってたらいいやんなんて言ってしまいそうです。
ほらほらそこの読んでいる君、僕なら確かに そういうこと言いそうな冷たい奴だなんて思わない!

こうして、6日間の予定は、5日間になったのでした。
その分、一日に歩く距離が増えたので、僕はもうクタクタ、足はガタガタ。
でも、充実した楽しいトレッキングでした。
それにしても、虫歯で予定を変更することがあろうとは、さすがに予想もしてませんでした。
つくづく旅ってもんはいろいろな事が起こるもんだと実感しました。

そして、虫歯と言えば、僕は今まで一度も虫歯になったことがない。
これが僕の唯一の自慢できることか!?
丈夫な歯にしてくれた、お父さんお母さんありがとうー。



トレッキング3日目。
いよいよロライマ山に登る。
800m程の切り立った崖で、とても登ることができる様には思えないのだが、うまい具合に斜めに自然の道がついており、そこを通ることにより簡単に登頂することができるのだ。
とは言っても、やはりそれなりの急な勾配の小道が続き、体力的にはかなりきつい。
しかし、やはりみんなテンポよく歩いて行く。
いつも、このようなツアーに参加すると、一人くらい体力的に弱い人がいるものなのだが、今回のメンバーはみんな強い。
特に20代のイヴァ、マイクル、アニータの3人は速い。
とてもついてはいけない。
43歳のバリーと35歳の僕。
少し遅れる。
これが年を取るってことなのか。
昔は僕だって若くて体に脂肪なんてものはなくて・・・。
すみません、嘘つきました。

出発してから3時間。
とうとうロライマ山の天辺まで登りきる。
ガイドによると、普通は4時間ほどかけて登るらしいので、この3時間というタイムは中々のものらしい。
みんなと喜びを分かちあう。
このようなツアーに参加して思うことなのだが、ツアーの印象はその内容だけでなく、そのとき参加しているメンバーによってだいぶん違ってくるものだ。
その意味で、今回のメンバーはみんないい奴で、本当に楽しい。

ロライマ山の頂上の世界。
それは、真っ黒なごつごつした岩の大地に、シダやパイナップルのような植物が生えた、太古の世界を思わせる何とも不思議な場所。
わざわざ登ってきた甲斐のある風景だ。
そして、何よりも印象的なことは、音が無い。
静寂。
風の音さえ聴こえない。
耳の奥でキーンとした音が聴こえてくる。
一旦みんなが黙ってしまうと、なんとなくその静けさを破り、声を発することをためらってしまう。

荷物を下ろしテントを設置した後、山の下から見上げると自動車の形に見える、ロライマ山では一番標高の高い地点になる 岩山に登る。
そこはロライマ山の端にあり、断崖絶壁になっており、下までは何百mもある。
雲もあまりなく、遠くまで見渡せてすばらしい。
しかし、崖に近づくことははっきり言って、怖い。
這いつくばり恐る恐るはじっこまで行き、引きつった笑顔で記念写真を撮る。
あわてて崖から遠のき、その後は近付かない。
でも、みんな意外と平気にはじっこの方に立ったり、腰掛けたりしている。
いつも思うのだが、何故このような場所で、そのような振るまいができるのであろうか。
落ちたら怪我どころか確実に死ぬんだよ。
突然、突風が吹いたら、何かにつまづいたら、誰かに押されたら、というようなことが起こりバランスを崩し落ちてしまうと言うような事を考えないのだろうか。
僕がビビリのチキンハート?
断じてそんなことはないぞ。
ただ、想像力が豊かなだけなんです。
いや、妄想力と言うべきか・・・。



トレッキング2日目。
ロライマ山のすぐ麓にあるキャンプ場まで歩く。
時間にして、4、5時間ほど。
上り坂がずっと続くのだが、まだそれほど急勾配という訳でもない。
相変わらずみんなけっこう歩くペースは速いが、休憩もこまめに取るのでなんとか気持ち良く歩ける。
だんだんとロライマ山が近づいてくる。
遠くから眺めるととうてい登ることができる山とは思えない。

歩きながら、バリーをはじめ他の参加者は皆、さかんに虫刺されの予防のスプレーを体に吹きつけている。
いつも思うのだが、欧米人というのは、なぜこれほど蚊に過敏に反応するのだろうか。
たしかに僕が刺されていない時も、よく刺されているので体質的な問題もあるかもしれない。
それにしても、別に一匹や二匹刺されたからって、どうってことないと思うのだが。

そして、欧米人、特に女の人はとにかく日焼けすることに熱心だ。
トレッキングをしながらも、タンクトップを着たりして肌をできるだけ露出させて、日焼止めクリームを塗り、とにかく体を焼こうとする。
アニータなんて、すごい短い短パンをはいていて、少し尻がはみ出ているくらいだ。
目の保養にはなりましたが・・・。
3時ころにはキャンプ場に到着したのだが、イヴァとウェンディは水着姿になり、マットの上に横になり日光浴を始めた。
おいおいおい、ここはビーチじゃないんだから。
しかし、僕から見れば焼いてもきれいな色にはならず真っ赤になるだけだと思うのだが。
せっかく白い肌をしているのにもったいない話だと思う。
まぁ、余計なお世話ってやつだね。

今晩も、すごく星が綺麗だ。
流れ星もいくつか見ることができた。
明日、天気も晴れて無事ロライマ山に登頂できますように。



ロライマ山トレッキング初日。
参加者は、僕とノルウェー人の女の子イヴァ、スコットランド人の夫婦バリーとウェンディー、オーストラリア人カップルのマイクルとアニータの6名。

まずは自動車にのりロライマ山の麓にある町サンフランシスコまで向かいます。
2時間ほどで着き、食料、テント、寝袋などが入ったバックパックを背負い、いよいよ歩き始めます。
バックパックはもともと山歩きのためにあるものなんで、僕の薄汚れた赤いバックパックも山歩きに使われるなんて喜んでいることでしょう。
道は、あまりきつい上りや下りの少ない比較的平坦な道。
初日の肩慣らしにはちょうどいいでしょう。

しかし、実際歩き始めると予想以上に体力が落ちていることを実感します。
そう言えばこの前トレッキングをしたのが去年の年末のパタゴニアで、それ以来町の観光とかだけであまり体力を使うことをしていなかったです。
また、ちょっと前に体調を崩したことも原因しているのでしょうか。
特に上り坂を登る時はすごくしんどく感じ、油断すると他のメンバーから遅れそうになったりします。
呼吸も僕が一番ゼーゼーいっている感じがします。
こんなに体力がなかったかな。
運動を怠ったからなのか、それとも単に歳を取ったからなのでしょうか。
いやいやまだまだ若いもんには負けてられん。
でも、やっぱりしんどいんだからしようがない。
あ~。

夕方4時ごろキャンプ地に着きます。
ここでテントを張り一泊します。
川で身体を洗い、ガイドが作ってくれたスパゲティーを食べると外は真っ暗になっています。
空にはたくさんの星が。
天の川もはっきりと見えます。
こんな夜空を見るのは南米に入って初めてかもしれません。
寝る前に歯を磨きに、キャンプ場から少し離れた場所にある川に行きます。
そこは、まったく明かりがないためさっきより星が多くあるように感じます。
そして、星空の下には真っ黒にシルエットを浮かび上がらせるロライマ山の姿が見えます。
その姿からはなんか得体の知れないパワーが出ているように感じ、なんか怖くなって走ってテントまで戻り寝袋にもぐり込みました。

まってろよ~ロライマ山。





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